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タイ生活備忘録/その他

ターンテーブルを手放した話

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悩みに悩んだ結果、17年間愛用してきたTechnicsのターンテーブルを手放した。

自分の中ではかなりのビッグイベントだったため、手放すに至るまでの理由や思い出、ターンテーブルへの感謝をこめて記事にさせていただきます。

 

購入〜手放すまでの概要

タンテの思い出とタンテへの感謝

友人の友人が作ったというパンクのミックステープを聞いて衝撃を受け、DJ機材一式を購入。購入当時〜25歳の頃まではジャンルを変えつつ毎日いじってたし、それが楽しくてしょうがなかった。毎日壁(という名の妄想オーディエンス)に向かってガッツポーズしてた。

「毎日毎日、努力家だね」なんて言われて「へ?」みたいなことがよくあった。努力を努力と感じない感覚は、DJの練習で経験した。

DJとしての所作やつなぎ方、音ネタを勉強するために、今は無き新宿リキッドルームのVIVAとLOOPAに足繁く通った。リキッドルームのオープンの時間になると近くのコンビニでユンケルを一気飲み。ポケットにはチュッパチャップス。
入場後はクローズまでエビアン1本で粘り、安物のマイクとMDLP録再ウォークマンを使って現場の音を収録。埼玉県の奥地まで電車で帰る帰路でその音源を再生。翌日からその耳を頼りにレコード屋で音源を漁る。目当ての音源を見つけては心の中で歓喜して、家に帰って繋ぎの練習をする日々。クラブは遊び場ではなく勉強の場だった。

行動自体はオタクそのものだったが、徐々にクラブ好きの社交的な友達もでき、なんとか人間としての存在を保っていたように思う。そんな自分に声をかけてくれたヌルマユのメンバーは一生の宝物だ。

タイに転勤が決まった時も、タンテだけは日本に置いていけなくて持ってきた。タイでDJをやりたいという願いも込めて持ってきたのだが、その願いは意外と早く叶って移住後1ヵ月くらいでDJをやらせてもらえて、そこから友達も爆発的に増えた。

オタク気質な自分に、タンテが「音楽」という社交的な話題を提供してくれたおかげで生活はとても充実した。

しかし生活環境が変わったことによって心境も変わってきて、タンテに触る機会もめっきり減ってしまい、ついに手放す事を決めた。

 

手放すという決断

手放すかどうかは本当に迷った。

タンテはいじっていればやっぱり楽しいし、タイにまで持ってきた愛着もある。なにせ17年付き添ってくれた相棒だ。
タンテのおかげでいろいろな人に出会えたし、日本最大級のクラブ、Studio CoastでDJする(Waterだけど)機会がもらえたのなんて、パンピーの私としては一生の思い出である。

それでも手放した理由は何だったのか。
話が逸れるが、つい1〜2年くらい前、収納のスキルを上げたくてこんまり氏の本を買った。この本は収納や片付けにとどまらず、生活スタイルの変化を見据えた内容になっている。
この本をきっかけに物の持ち方について色々考え直すようにり、コレクター気質 a.k.a. 物が捨てられない自分を変えてくれた。以降、いろいろなものを捨てたし、それによって生活は向上した気がする。こんまりさんはちょっとした自分の師匠だ。

人生がときめく片づけの魔法

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当書籍に書いてあるこんまり流の片付け方法「ときめくものだけを残す」方法で仕分けした場合、ターンテーブルは間違いなく「ときめく」側にカテゴライズされ、残しておくべき物ということになる。

その師匠の教えからズレてまで手放した決定打。
それは、変に思われるかもしれないが、トイストーリー3のアンディが背中を押してくれた、というのが1番しっくりくる。 

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トイ・ストーリー3の内容(ネタバレ)

アンディは大人になり、おもちゃには触れることがなくなった。おもちゃ達はダンボール箱に入れられ屋根裏に。

おもちゃたちはいつか処分されてしまうのではないかという恐怖の中、箱の中で埃をかぶっても尚、屋根裏からアンディを影で支えようと心に決める。

最後は、アンディが大事にしてきたおもちゃに対する寂しさと感謝を送りながら、大事に「遊んでくれる」子供に託すという感動的なエンディングで終わる。

その姿が、自分と機材の関係に重なった(大げさ)。

要は、今、大事にしっかり遊んでくれる人に託すことにした。

タンテはとても良い状態で保管している。でも、遊んでいるかというと、頻度は激減している。今の状況で、機材たちが喜んでるかといえば、そうではないはずだ。もっと使われる機会を待っているに違いない。
機材だって生き物で、使い続けたほうが調子が良い状態が続く。使わなければ油が固着したりゴムが硬化したりで劣化が激しくなる。「もっと使ってくれればいい仕事するよ!」と、機材たちも今の状況をもどかしく思っているのではないか。

もちろん、譲るにあたって間違いない友人と出会えたからこその決断だ。
彼は今一緒にイベントをやっている仲間であり、バンコクの中では愛されている存在。今もタイや近隣国でレコードを買っているし、タンテの出番も多いはず。

そんな人に託して使われ続けた方が、機材としては幸せなんじゃないか。
アンディがおもちゃを譲ったのも、きっとそう考えての判断だ。

日本に帰ってからタンテが欲しくなれば、その時にまた考えればいい話。
タイに住んでいる間は、あまり出番を増やすことができなさそうだし、タイではタンテは貴重な機材の1つ。使わないで劣化していくよりは、使われて本来あるべき磨耗をしていった方がいいに決まっている。

だからこそ、寂しくもあるが、今までの感謝の気持ちを込めて、次のユーザーに存分に使ってもらうことで彼らの機材人生を全うして欲しいと思った。

自分が後世に託すことを考えるようになるとは思ってもみなかったが、歳をとるとそういうことも考え始めるんだろう。経たなぁ。

 

タンテ離れ→悩み始めたキッカケ

こんな感情論まで達したのには、手放すかどうか悩み始めるまでのプロセスがあるのだが、そこも正直に残しておく。

自分がタンテから離れていった大きな原因の1つは、バイナル直掛けのスタイルからインターフェースを使ったPCDJに移行したことにあると分析。理由は下記。

1. 現場でのトラブルが多い

タイでタンテを使ってPCDJを操作するには、環境が良くない。

というのは、なぜかわからないがタイのクラブではSL1200 MK2というかなり古い機種が未だにメインマシンとして使われている。古いだけあって、ケーブルが破損していたりカートリッジの接触部が錆びていたりしていることが普通。

そのため、バイナル直掛けであればなんとかなっても、PCDJのコントロールバイナルの信号は上手く送れないケースが多々ある。
まぁ、なんとかなる事もあるのだが、トラブルの原因特定→改善→セットアップと時間がかかってしまったり、交代の時にトラブルが再発したり、プレイ中に音が変になってしまったりで周りに迷惑がかかり、とても申し訳ない気分になる。

レコードの文化自体は独自の雰囲気で盛り上がっていて、ターンテーブル自体も重宝されているのだが、PCDJを使う目的とは少しずれている。

2. 配線が手間

当方RANE SL4使いだが、家でインターフェースを外す→現場に持っていく→自宅に戻ってまたセットアップする、という配線作業のたびにゲンナリしてしまう。しかもインターフェースを挟んだことによって必要なケーブルが倍増し、ケーブルだらけの景観はインテリアとしても良くない。

そんなことを思っている自分が許せないのだが、萎えているということは、機材に注いでいた熱もそれだけ下がっていることは否めないのだと思う。

3. タンテをいじる楽しさが減った

約10年前ほどだろうか。まだRANEのインターフェースが1種類しかない早い段階にPCDJに移行したのだが、今となってはそれが良かったのか悪かったのかは自分でもわからない。

なぜかというと、まず、PCDJに変えて音がボヤけた気がする。
なんというか、頭出しスクラッチの際にキックの音の輪郭がダイレクトで「ドン!」とくる感覚がなくなった。PCDJは、それが物足りなく思う。選曲のレパートリーは無限に増えた代償として、機材を操作する快感というか楽しさは明らかに落ちた。

それでもPCDJのメリットである選曲の自由さが勝ってレコードから離れていったわけだが、タンテを触る頻度が低くなったきっかけの1つであることは間違いない。

あとは、2でも述べたようにインターフェースを繋げないとDJができないというのは、レコードに針を落とせば聞けた時と比べて圧倒的に手間が増えてしまい、面倒な作業を増やしてしまった。

そういった小さな手間の積み重ねから、PCDJにタンテを使う目的や楽しさがわからなくなってきて、徐々に離れていった気がする。

4. 機材への優先順位が下がった

これは単純に、結婚して機材に触る時間が減った、という意味。

ネガティヴな意味ではなく、独りで暇だからなんとなく機材をいじってた(しとても楽しかった)時間が、パートナーと話したりテレビを一緒に見たりして過ごす時間に変わったというだけであるが、その変化にストレスは一切感じていない。

むしろ生活はとても良い方向に向かっており、心はより豊かになったと思う。

 

今後のDJ機材との付き合い

ターンテーブルは手放すけど、DJの趣味は続けたい。今は、機材へのこだわりよりも気軽にDJができる環境に重点を置きたい。
そのため、家庭DJ環境は、DJコントローラーに変更することにした。

Pioneer パイオニア DJコントローラー DDJ-SX2 ( DDJSX2 )

Pioneer パイオニア DJコントローラー DDJ-SX2 ( DDJSX2 )

 

新しく家に来ることになったDDJ-SX2は、配線もシンプルだしセットアップも簡単。BGMをかけるような感覚でカジュアルに機材を触る機会が増えればいいな、と思う。

エントリー機種よりもある程度良い物を買った理由は、現場でCDJをいじることになっても操作の応用で使えそうなレベルの物であるため。バンコクのPioneerショップで店員に顔を覚えられて世間話をするくらいの仲になるまで機材を試して、このコントローラーの購入を決めた。

 

これからもDJという趣味は続けて行くが、家にタンテが無い環境というのは実に17年ぶりで、少し変な気分だ。寂しくないと言ったら嘘になるが、自分が持っていても宝の持ち腐れになってしまう。道具は使われてこそ道具の意味がある。新天地でもいろんな曲をかけられることを願っている。

今まで壊れること無く、自分の趣味を支え続けてくれたSL1200 MK3Dには感謝しかない。

機材を譲った後もやっぱりターンテーブルっていうのは特別な楽器だし、現場で使うことになったら感謝しながら触りたい。

今までありがとう、Technics SL1200 MK3D!
あなたは今もこれからも、素晴らしい楽器であり続けて下さい。

 

皆様、何の得もない駄文に最後までお付き合い頂き、ありがとうございました。